《 加 》 相武台脳神経科外科の加藤貴弘です。今日は、チャンネルSに、デフレの正体と里山資本主義を書かれた、藻谷浩介さんをお招きしてお話を伺います。当院では、健康を考えていくうえで、まずは体の声を聴き続けましょうという根本的な事に関して、お話しさせて頂いていますけれども。
藻谷さんご自身は、社会に対して元々、私たちはどういった社会を作った方が良いのかという根本的な事に対してのお話を、この２冊の本でさせて頂いているので。結局、社会に対しても体に対しても、言いたいことは一緒なのだという事を、今回のお話しで皆さんにお伝え出来ればなと思います。今日はおそらく、非常に面白いお話しが聞けると思いますので、どうぞ、よろしくお願い致します。
《 藻 》 例えば、子どもがね。もうね嫌なんだと。私は生きているのが嫌になってしまったんだって。本当に何の為に私なんかを産んだのなんて、仮に言ったとしますね。何って答えます？
《 加 》 子どもに対してですか？何の為に生きているのかわからなくなってしまったのですかね。
《 藻 》 私なんかは実は、自殺しようまで考えた事が沢山ある人間でね。親に聞きませんでしたけれど、昔ね。凄い屈曲の多い、かなりアップダウンの激しい人生で。毎日、どうやって死んだら、皆が反省するかなんてね。仕返しの為に死んでやるみたいな事を考えていた事が凄く多い、子どもの時があったのですけれど。
そういう風な事ばかりを考えている奴らばかりがいたとした時にね。あなたは何の為に生きているのですかと。
《 加 》 藻谷さんの本の中で読ませて頂いたのですけれど、やはり人は誰かにかけがえのない人ですと言われるのが、一番生きる目的だと書かれていて。やはりそうかなという感じはします。
《 藻 》 それで、何を甘い事を言ってるんだよみたいな事を言う人がいるのですけれどね。そういう方は、かけがえは無いのかという問題があるわけですよ。人はね、かけがえがの無さを獲得するという事に意味があるという事を、私はこの本の中で書いて、よくぞ読んで下さいました。これどう思われました?読んでみて。その通りだと思いましたか？はたまた、こんな甘い事書きやがって、ふざけんなと。
《 加 》 本当に夢中になって読みまして、僕自身は凄く面白かったです。
《 藻 》 あなたはお金では買えないというね。お金がいくらあってもね。いくら金があっても、何もせずに節約を重ねてお金だけをため込んでも。それで、あなたの事を誰かがかけがえのない人だとは言わないでしょう。
《 加 》 東急田園都市線の土地って凄く高いのですけれど、高級な所なのですけれど。皆さん結構、共働きの方がいるのですよ。子どもを預ける時に、保育園代がべらぼうに高いのですね。普段の保育園代の、二倍か三倍くらいしていて。で、お母さんは働きに出ていて、それに払うという。
そんだけ払うのだったら、お母さん働かなくて、子どもと一緒に過ごした方がと思っていて。で、何の為に働いているのかなって、訳が分からない人とかもいて。結局、何の為に働いているのかなという所が凄く狂っている。
《 藻 》 その場合ですね、その人達はやはりかけがえのない存在として、実感を得ている可能性はありますよね。私はお母さんがね、子どもとのかけがえのない人生を歩むのは良いのだけれど。子どもが大きくなったらどうなるの？という、話なのですよね。
子どもにママと呼ばれる事が、かけがえのない自分ではありますよ。それはもちろん、そうなのだけれど。それしか、かけがえのなさを持っていない人は、死ぬまでママと呼ばれ続けないといけないじゃないですか。だから、モンスターペアレントになるのですね。
だからその、職場の中でも近所の中でも、たまたま偶然乗り合わせた電車の中でも、さりげなく人に役に立って。かけがえのない存在をぱっと出来るのかという事は、凄く大事なことで。だから、職場においてかけがえのなさを実感して欲しいと僕は思うのですが。
そのことを、ここで言っているのは、自分の存在価値は稼いだ金額で決まると。酷い時は、他人の価値をその人の稼ぎで判断すると。
《 加 》 年収で。
《 藻 》 そう。で。それは違うのですよと。価値を測る物差しでお金をため込むのと違いますよと。お金は何かを買う為の手段であって、買わなくても良いのだったらそんなにいらないのですよと。
要するに、かけがえの無さはいったいどこからくるのでしょうね。それはその、その時その時に
よって違うのですよ。だから要するに、子どもが手のかかる時なんかはね。親というのは、かけがえのない存在ではありますけれども。仮に、死ぬまで親でいるわけにいかない。あり続けるわけにもいかないと言いますかね。
ただ、子どもが結婚してまでね、母親が出てきて何度も面倒見ていたのではね。子どもの人生がおかしくなるわけで。やはり、その時その時にかけがえのなさを、どうやって手に入れていくかという事を考える時に、一つひとつの物ではいけないのですね。
ただ、何をしても一つ言える事は。申し訳ないのだけれど、そのことの時にお金の価値というのは、凄く何というか、全然本質に関係無いのですね。
《 加 》 そうですよね。
《 藻 》 もちろん、生活保護で全部人に払ってもらってますじゃ、困るのですけれど。とりあえず、自立してある程度自分で食えるとして、その次に何を目指すのですかと。いや、そこをさらに時給２倍にして下さいという事よりも。あなたが存在している事が、かけがえがないねと言ってもらえるにはどうしたら良いのかという事を考えるのです。
その時に、そのかけがえのなさはさらに、何か役に立つとかけがえがないのかという。役に立つ事が大事なのかというと、役に立つ事は大切なのだけれど、役に立たなくてもかけがえはないのですね。これは、ダウン症のお子さんとかをもっているお母さんや親御さんは、毎日、痛感していらっしゃると思うのですけれど。
ダウン症は、誰にでも一定の確率で起こることなので。良くあるのは、ダウン症のお子さんがいる人には、兄弟はダウン症では無い兄弟がいるケースが多いですね。それで、凄く大変ですって。克、比較的長生きしにくいのですね。そんなに、ダウン症の場合。どうしても、染色体異常なので。平均的に早めに亡くなってしまうのですね。
大変なのですけれども、ダウン症のお子さんをお持ちの方は皆、思っていると思うのですけれど。非常に、かけがえのないお子さんであるケースが、極めて多いのですね。今はその、出生前診断とかでも、産まないよって人が増えていて。どうなのでしょうね。つまり、産むと大変だしね。お金もかかるから、産みませんみたいに。親が本当に喜んで選択している人がどれだけいるのでしょうか。
本当はだから、ダウン症のお子さんというのが、兄弟にとっても親にとっても、とっても大変なのだけれど。極めてかけがえのない存在である。本当に日々、生きている事となると、何が大事なのかということを、子どもから教わるという経験をされているのですね。僕の友達にもそういう方がいるのであれなのですが。
つまり、何を稼ぐのでは無いのですね。お金的にはマイナスですね。役に立つかというと、それは一生懸命にやってくれるけれども、そんなに凄い事で役に立つかは分からない。だけれども、その存在、その方が物凄くキラキラしているのですね。
《 加 》 つまり、本物を教えてくれるというか。その他を、気付かせてくれる存在ですよね。
《 藻 》 そうです。赤ちゃんというのも同じで、赤ちゃんって何も役に立たない。ただ泣いているだけで、凄く大変なのですけれど。実は、たまたま長男が赤ちゃんの時に、先天性の外傷、外科的障害があって、死にかけるという経験をしているのですね。２回大入院をして実は、助かったのですが。
今でも、若干、後遺症が無いわけでは無いのですが。基本的には、外科的な問題なので、多数あるのですけれど。その時に、産まれたばかりの赤ん坊が死にかけるという経験をしてみると、男親ですしね。まぁ、そんなもの平気かと思ったらね、物凄く辛いですね。びっくりしましたね、こんなに辛い。生き物だと思いました、自分でも。子どもが死にかけるってこんなに、本能的に訴えてくるものかと。母親の方が、むしろあっけらかんとしている様な感じでね。
やはりね、つまり、人って生きているだけでかけがえが無いのだなという事を、本能的に理解しましたね。本当に。頼むから、俺より先に死ぬなよと。当然だから、子どもの場合は、その後に別に障害が残っていないので、普通に食って何とかしてください人生と。
だけれど、それが、これこれこれをしないとダメという様な条件を付ける気は全く無いですね。普通に食って、何とか自分で自活して。出来れば、結婚して子どもがいる様な、幸せな生活をしてほしいと。たまたま、性同一性障害でもないので。要するに、普通なので。その点は、常識的、普通だったので。だったらば、どこかで相手を見つけて、家族を営んで下さいよというのが、僕の要求ですね。
それ以外に、色々な要求を付ける奴の気が知れないのですね。例えば、うちは家業もありませんのでね。家業を継げという理由も無いものですから。そうすると、あれをしろこれをしろ。良い所に行って何をしろってね。どこかの大学に行って、エリートサラリーマンになれとかいう要求をする人の気持ちが良く分からない。どうだって良いじゃないかと。
生きていて、子孫が繋がるという以上の事をね、あなたがいくら要求したってそんなものは、歴史的にどうだって良い事だぜと。なぜそんなどうでも良い事をね、やたらこだわるのでしょう。もう手段が目的とひっくり返っているのではないですか？と、つくづく思うのです。
《 加 》 見た目が大切な事と、本当に本当に大切な事って、逆転している事があるのですね。
《 藻 》 そうですよ。だから、本人がやはりね。例えば、子どもがですよ。子どもが例えば凄い、良い学校に行ってね。それがどこかの凄い、良い社会的地位についたとするじゃないですか。それで、例えば、結婚もせずにね。仕事を邁進してね。ふと気が付くと、寂しい老後を迎えていましたというのがね。それは、本当の意味で、かけがえのない人生を送ったという事になるのだろうか。
いや、それはもちろん、色々なきっかけでそうなるケースもあるのですよ。結婚したけど、震災の時なんかに、旦那一人が生き残って家族全員が亡くなってしまったなんていっぱいあるわけですよ。本当にこれ、おじいちゃん、おばあちゃん、子ども４人全員が死んで、夫婦だけ残ったとかね。老夫婦だけ残ったとか。中年部だけ残ったとか、色々なケースはあるので。それはそれでしょうがないのだけれど。
たまたま、そうではない。偶然、震災にもあわずに生き延びた場合はね。それにも関わらず、天涯孤独ですみたいなね。良いのでしょうかそれでと思うのですよ。あなたは、たまたまアメーバから４０億年、現在まで偶然DNAが繋がって生きているわけだから。何もそれを自ら自己否定せんでも良かろうと。
あるいは別に、たまたまそうは言っても子どもが産まれなかった、死んでしまった。色々なケースがありますね。結婚相手に恵まれなかった、良いのです。だけど、例えば、誰かを引き取って育てるとかね。育てなくても良いのだけれど。色々な所に寄付をしていて、そのおかげでどこかで子どもさんが、親もいない子どもが生き延びられました。そういう事に、参加した方が、かけがえが無いのではないかって。要するに、命が繋がっていくって事に対して、もうちょっと参加したらどうだよと。
そう言っている私の頭の中では、自分の子どもがいるという事と。いないけれど子どもを、誰かさんに、あなたのおかげなり労力で、誰かさんの子どもが育ったという事は、全くイコールなのですけれどね。イコールなのだけれど。命が繋がるという事に対して、かけがえのない貢献をした方が良いのではないの？とね。どこぞの社会的に一瞬偉くなるより、重要なんじゃないのかなと。私は実は思うのですね。
《 加 》 やはり、繋がって行く中で、後に来る人に、本当に大切な物とか。大切な生き方とかを、背中で教えられたら良いですね。
《 藻 》 そういう事を言うとね。そんな事は、あまっちょろいみたいな事を言う人がいるのですよ。それでね、あまっちょろいというのも良くわからないのですけれど。いつも何というかその、例えば、人間はずっと競争して国際競争をしてね、お金を儲けて勝負をして他人に勝つのが人生だと言っている人は、僕はあまっちょろいと思うのですね。そういうあまっちょろい事を言って、全員が競争していても、社会が成り立つようなあまっちょろい平和な時代に産まれているから、そういうのんきな事を言っていられるのね。
《 加 》 日本人がやはり、公の国民だとしても、やはり自分たちは何の為に。自分達の本当の価値というのを見つめるというか。大切な物というのを、目的というよりも、何が大切で何が大切ではないのかというのを、本物を見る目をそれぞれが見つけて行くような道に行った方が良いのではないか。
《 藻 》 そうなのですよ。行かないとすると、非常にその方があまっちょろいのですね。各人が勝手に金儲けに邁進していれば、世の中はバランスが取れて上手くいくと思っている、あなたこそがあまっちょろいので。
《 加 》 奴隷的な考え方ですよね。
《 藻 》 世の中は、実際はそんな事は無いのですよ、。各人が、何の為にやっているのだろうと悩みながら、自分なりに自分の欲求と他人の欲求とバランスを取りながらね。世の中をどうやったらきちんと動いていけるのかなという事をね。考えていける社会にするという事が、大事なのであって。
そういう事を一切考えずに、全員が金儲けをすれば、神の見えざる手がバランスを取ってくれてね。上手くいきますというね、アダム・スミスが一つ仮説として、そういう事もあるよと唱えた事が、常に妥当すると思い込んでいるあなたがもう、物凄く考え方が甘いという風に、僕は思うわけですね。
自然と己の位置を確認しているわけですよ。里山で生きている人というのは、わりとこの境地に入りやすいのですね。
相武台脳神経外科
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