《 加 》 こんにちは。相武台脳神経科外科の加藤貴弘です。当院では、体との向き合い方。在り方というのを、ずっとお話をさせて頂いていますが。スポーツを通して、心の在り方を発信されている、スポーツドクターの辻秀一先生をお招きしてお伝えします。どうぞ、宜しくお願い致します。
宜しくお願い致します。辻先生は今、禅脳思考とか。今はスポーツ選手のコンサルタントとか、マネジメントというかカウンセリングというのですかね。そういうコーチングみたいな事をされていると思うのですけれども。凄い極限の選手というのが、本にあったのですけれど。イチロー選手だとか、吉田沙保里選手だとか。将棋の羽生さんとかというのは、やはり最終的には、こういった考え方になると思うのですが。
やはり今、アプローチされているというのは、そこまで極限状態では無いけれども、今、色々と伸び悩んでいる方とかそういった方に、思考を身につけさせていくという事なのですが。そこで何か、今壁になっているというか、ちょっと大変だなと思われる事ってありますか?
《 辻 》 僕自身が?スラムダンク勝利学を書いたのが15年位前で。僕の大きな人生を変えるテーマは、パッチ・アダムスという映画を観て、クオリティ・オブ・ライフ。人生には質があるのだと。で、質というのは、目に見えないし、定量化出来ないものだと。でも、ここには空間の質もあるし、時間の質もあるし。思考の質もあるし、関係の質もあるし。質というのは物凄く、我々の人生に大きな領域を占めているのに、見えないので我々はほとんど意識しないと。あ、質というのがあるんだというのが、初めてKOの内科医になって一人前になった頃。
31歳の頃に、初めてパッチ・アダムスの映画を観て、質かぁと。じゃ、質を決めているのは何?と言ったら、やはり結局は心の持ち方だと思ったのですね。でも、心の持ち方というと、大抵は心の専門家は日本の場合は特に、精神科とか心療内科、病んだ心の専門家は沢山いるのだけれど。人生の質をより良くする為にも、誰にも心の状態というのはあって。そこをより良くする為の、心のサポートというのは誰がやるのだろうと思った時に、それって、スポーツ心理学だなと思ったのですね。
スポーツ選手が、それこそ究極では無くても皆がより良くなりたいと思っていて。大部屋メンタルトレーニングみたいなのもあるし、日本にもスポーツ心理学というのがあって。スポーツ心理学はどちらかというと、病んだ人の心理学では無いので、よりパフォーマンスやより充実した質を上げる為にどうするのという話なので。それで、興味を持ったのですね。
それで、日本のスポーツ心理学会に行ってみたら、これはつまらなかったのですよ。学者が多くて、論文を書く為の有意差検定をしている感じの。今は、だいぶ変わりましたけれど、当時15年くらい前。で、アメリカの応用スポーツ心理学会というのを見に行ったら、これがとても、とてつもなく面白かったのですね。
スポーツ心理学という、スポーツというのは凄く心の存在が分かりやすい活動なので。例えば、やる気が無いと、シュートが外れて負ける。チームワークが悪いと、コミュニケーションが悪いので負ける。心の見えにくいファジーな領域が非常にクローズアップされていて、スポーツは心技体と言われるじゃないですか。なので、それが学問かされていて、それをもっと日常やあらゆるシーンに、医療の分野や教育の分野や芸術の分野、あらゆる所に抱擁していきましょうという様な事を、やっている学問があって。学問というよりは、実学ですかね。
それを見に行ったらもう、感動しまして。38、それこそ、38歳の頃ですね。で、スポーツ心理学の先生が、自分はニューヨークのジュリアード音楽学院で、メンタルトレーニングを音楽家にしているとか。昨日までは、コロラドスプリングスでオリンピック選手のメンタルトレーニングをやっているのだけれど。明日から、ウォールストリートに行って、ビジネスマンのメンタルトレーニングをするのだとか。凄いなと思って、これだなと思って。
心の存在が重要だけれども、僕も気付かずに生きてきたので。なんとか、皆に分かりやすく気付かせたいなと思って、最初にひらめいて書いたのが、あのスラムダンクの漫画を使って、何か心の存在とか価値をまず伝えれば、まずノウハウとかメソッドよりも、存在と価値を皆感じていないのでは無いのかなと思ったので。それを何かこう分かりやすく、怪しくなく伝えたいなと思ったのですね。
そういしたらまぁ、沢山の方に読んで頂いて。スラムダンク勝利学が。やはり、皆興味があるのだと。バスケット関係者だけかと思いきや、以外に企業の経営者から、お手紙を沢山頂いたのですね。仕事をしていく上で、役に立つと。心が大事だというのだけれども、何か気合いとかばかりで、この本を参考にして社員教育をやっているみたいな、お手紙を沢山頂いて。そうかと言って、僕は独立をしたわけですね。30それこそ、38歳の終わり頃ですね。
そこから、本を書いたり講演会をする様になったり、セミナーをする様になったり、企業のコンサルタントをする様になったり。色々な事をする様になったのですけれど、今のご質問に戻ると、それでもやはり心って見えないので。僕は今、どんな心が良いかと言った時に、心理学的には難しい言葉を使うと、フローという、揺らがずとらわれずな状態を言っているのですけれども。
心理学者の人にとってみると、皆さん聞いた事があるかもしれないゾーンの領域。でも、ゾーンで毎日生きる必要は無いと思っていて、もっと気楽なフローが大事だなと思っているのですね。最近の心理学の言葉を使うと、マインドフルネスですし。自然体のありのままの、ナチュラルに生きる感じなのですね。
僕は、自分なりのオリジナルで何が皆に分かりやすいかなと思うと、機嫌の良い状態だと思っていて。どうせ、人生を生きるのなら、機嫌良く。ご機嫌というのが大事で。不機嫌カンパニー多いし、不機嫌ファミリー多いし。もう皆が不機嫌だから、やはり機嫌良くやろうと。どうせやるなら、機嫌良く生きるのなら、機嫌を良くやろうと言った時に、やはり色々な企業に呼ばれて行くのだけれど、機嫌が悪い事に慣れすぎていて。
そして、機嫌が外によって作られる物だと決め過ぎていて、自分で自分の機嫌が取れるのだとか、機嫌が良い事がいかに人生で重要な事なのかという事を、忘れている人が多いので。その機嫌の良い事を、伝えに言っても、機嫌が悪くて何が悪いのだという人が沢山いる事が、困難というよりは、残念な感じを受ける事が沢山ありますね。
なので、企業の場合は特に、経営者とか人事とかがやはり、機嫌の良い会社を作りたいので、辻先生来てくれと言って呼ばれて講演をしたり、セミナーをしたりするのだけれど。受講者が皆その、意欲があるかというと、そうでも無いケースがある。学校の先生も結構多かったりとか。その主催者と受ける人達のギャップがある事が、やはり何というか困ったことかなと思いますね。
だから、ワークショップとか、セミナーとかもやっていますけれど、それは自分の意欲で受けたい人が来るので。そこは、非常にやりがいがありますし。あと、スポーツ選手の場合は、オリンピック選手もそうだし、インカレ目指しているやつもそうだし。インターハイ目指している子ども達も皆そうですけれど、比較的やりやすい。やる気があるからね。
ただ、チームの監督さんが、今日は辻先生が来るから、良い話をしてくれるから皆聞けと言われても。え、メンタル何て俺いらないしとか、メンタル怪しいとか思っているチームは、選手はいるので。だから、チーム全体とか、組織全体になると、その温度差があるので。その事が、しいていえば難しいかなと思うのと。見えにくい心や質というものとか、脳の仕組みみたいな物は。僕は脳科学者では無いのだけれど、こう実学として皆に伝える、その伝え方の難しさみたいな物はありますね。
《 加 》 やはり価値を感じてもらわないと。分かってもらえないというか。
《 辻 》 そうですね。だからもう、徹底的に機嫌が悪いより、機嫌が良い事の価値をずっと考えてもらうというのが、僕のワークショップでもありますけれど。
《 加 》 そうですね。この本の中に、価値基準という言葉が出てきたのですけれども。やはり、価値基準が自分の中に出来てくるには、経験をしなければいけない。やはり、超一流の選手って、何かの拍子で。まぁ、凄い努力の上に、何かの拍子に凄い所を経験してしまって。で、その経験を持続させる為にはどうしたら良いのだろうというと、こうなるのです。宮本武蔵もたぶん、勝っていく中で、やはり1回凄く経験をしないと、価値があるという価値基準を伝える事が出来ないのかなというのは。出来ないというか、やはり難しいなと言うのは普段思っていて。
《 辻 》 そうか。僕はねでも、もちろんそう。ただその、フローで生きるというのは元々は、人間が誰でも持っていた脳の仕組みで。昔の原始時代は、皆エッジにいて、生き残る為には、揺らいで囚われていると死んでいたのですよね。だけれども僕らは、知らなくても良い平和な世の中を、この文明脳が造りだしたので。この心をマネジメントする脳が段々と落ちて、エッジを感じにくくなったと思うのですよ。
スポーツはまさにエッジにいるので、おっしゃられた通り感じやすい。そういうのが出来ないと、生き残ってはいけないなって。でも、僕は何というのですかね、エッジにいかなくても。もっと単純に、皆機嫌が悪いより、機嫌が良い方が良いのじゃない?という事くらいから入って、確かに機嫌が良い時の方がなんか人に優しいよなとか。機嫌が良い時の方が、ご飯美味しいよなとか。機嫌が良い方が、機嫌が悪い時より、人の話を聞けるよなとか。機嫌が良い方が、アイディアが出るよなとか。機嫌が良い方が、モテるよなとか。何かそういうもっと皆に近い所で、心の存在とか価値を気付いてもらいたいなというのは思うのですよ。
《 加 》 今、何か先程おっしゃっている様に、不機嫌がもう当然みたいな感じになってしまっている。特に、医者の世界とかそうですけれど。まぁ、自己防御とう意味もあるのですけれど。やはり、あまり心開いてしまうと、負けてしまう。負けてしまうというか、分からなくなってしまう。やはりある程度、不機嫌な状態というのが、医者の中での文化みたいになってしまっているのですけれども。
でも、旅行とかをして、タイとかネパールとかに行くと、一般の人は別にお金が無くても物資に恵まれていなくても、にこにこにこにこして掃除をしていたり、仕事をしていたりするわけですよ。だから、にこにこにこにこというのが、文化というか。それが、全体的な文化になってくれば、皆楽しくなるのかなというので。やはり少数でも、気付いた人がいて。それが広がってくれば良いかなという感じはあるので。
《 辻 》 そうね。少数だと思いますよ。本当に組織論的に良く言う、二六二の法則で。大体、どの会社に行っても、2割りくらいの人がやはりそういう生き方をしたいなと。これは結構、別に会社の上では無くて、全ての階層に大体2割りくらいの人がいて。6割りはどっちでも良しで、2割りくらいはもう不機嫌。新しい事は嫌だし、機嫌が良くて何になるのという人は、2割りくらいいるのだけれど。こっちの2割りの人がしっかりと出来ていれば、僕は良いかなと。
一億人いれば2千万人いる様な気もするし、でも、僕はね、日本人って何というのでしょうかね。その和を以て貴しとなすと言ってね、列をちゃんと並べるとかね。東日本大震災の時にも、暴動は起こらないというのは、そうしている方が、自分の機嫌が良く生きられるという事を、知っている崇高な民族だと僕は信じているのですよ。
《 加 》 振り幅が大きい程、成長が大きいですよね。
相武台脳神経外科
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