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健康保険の適応となっているがん治療、ハイパーサーミア とは? 照沼裕先生 第5回

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《照》 今度は、ハイパーサーミアということで、ハイパーサーミアと言うと、一般の方とか何のことかなと思ってしまうかもしれませんけれども。温熱療法の事です。ただ、温熱療法と単に言ってしまうと、非常に幅広くて色々お灸から、それから温泉から岩盤浴。色々なものがたくさんありますので。

 ハイパーサーミアということで、日本ハイパーサーミア学会というのがありますが、一応、医療機器として認められている加温によって温めるような、そういう治療もハイパーサーミアということで言って。研究は色々なものをしても、治療としてハイパーサーミアという時には、一定の医療器具として認められているようなもので、温熱療法をやる時に、ハイパーサーミアという様な言葉を主に使っていると。そういった意味では、沢山の今までに研究、臨床研究を行われて非常に良い効果も出ているということで。保険でも認められている治療です。

 一つのの理論的な背景になっているものとしては、試験管の中に、癌細胞を培養しておいてですね。温度を上げていくと、どんどんどんどん癌の生存率、癌細胞の生存率が下がっていくという事がわかっていて。特にですね、それはこのグラフなんですけれど。横軸は温めている時間。縦軸がこの癌の生存率なんですが。41℃、42℃、42.5℃、43℃という事で、大体42.5℃くらいを境に、癌細胞の生存率がガクッと下がるという事で、この辺に特別な温度があるんだろうという風に考えています。

《加》 0.5℃の差が凄いですね。

《照》 はい。この42.5°℃以上に上げてあげると、癌の死滅がたくさんになるじゃないかという事で、元もとは42.5℃以上に加温してあげようという事が、ハイパーサーミアとして一番最初、始められた時のコンセプトだったんですけれども。その後、色々研究されて、もちろん42.5℃以上になれば、癌に直接的な殺傷効果があって良いねと。だけど、そこまで上がらなくとも、元々の体温よりも温度が上がっていくことで、様々な物質的な変化が細胞の中やその周辺に起って、癌の免疫力も含めてですね、変化が起こり。また、血流の変化が起こり、癌の治療に有効なこともあるんじゃないかという事で、42.5℃以上にならなくとも、ハイパーサーミアという事で、色々な研究がされるようになってきていて。

 温度があまり上がらない、40°くらいまでの時には、マイルドハイパーサーミアという言い方をね、あえてされたりすることもありますが。今日、お話しをするハイパーサーミアというのは、それも全部ひっくるめて、温度がある程度上がると。ただし、うんとね、60℃とかそういう50°とかそういう高い温度ではなくてですね。せいぜい43、4℃くらいまでの話で、体の中でそういった変化が、温度が上がった時に起こる変化についてちょっと見ていきたいと思います。

 20年来使われて、非常に定評のある機械としては、我々は使ってるのはサーモトロン RF 8という風な機械を使っています。山本ビニターさんという所が作っていますけれども。これでどんな風に加熱するのかというと、台の上に患者さんが横になってですね、こういった30vmくらいの電極で体を挟みつけて、前後で挟みつけて。そして、高周波を流すと。8メガヘルツの高周波を流すと、体の中の方で、いわば電子レンジと同じような反応で十分に熱が発生して、40℃、42℃といった形で、せいぜい43℃くらいまで上がっていくだろうという風な機械です。

 患者さんを実際に治療する時には、約、我々の所では40分間。施設によって、30分から1時間くらいの間で、加温をする時間にはばらつきがあるようですけれども。通常、4、50分の所が多いかと思いますが。加温をすると、この挟みつけた中の所ですね。ここで色が変わっていますけれど。こういった中の方に、温かい部分が出来てくると。それでまぁ、電極の大きさとかを変えれば、身体の表面の方を温めることも可能であると。ということで、医療器具として認められているというので、実際の臨床では患者さんを治療しています。

 その特徴ということで、色々書いてありますけれども。ちょっとちっちゃい字なので、一つひとつは言いませんが、やっちゃいけない事としては、ペースメーカーがある人には使えませんよという事になっています。それから、その他、金属類が入っている所を挟みつける様な時には、どういう形状のものがどういう形で入っているか確認をした上で、問題がないかあるかを判断して治療しますよという事と。後は、体の部分で言うと、骨に囲まれてる部分はなかなかこの高周波が十分に入っていかないという事で、あまり十分な効果が上がらないかもしれないという事で、脳とかは適用から外れていたりしますし、目とかも外れていたりはします。それから、骨が溶けていない場合の、骨の中もなかなかね。十分には入っていかないかなとも考えられています。かけてはいけないという事では無いのですが、効果が骨が無い場合と比べると、少し加温の効果は低いかもしれないな、という風に考えられています。

《加》 骨の中ですか?
 
《照》 骨の中ですね。中に何か原因があると思いますね。とにかく、やってはいけないというのは、何よりもペースメーカーということかなという風に思います。

《加》 脳はじゃあ別に、やっても良いのですか?

《照》 脳が適用になってないというのは骨に囲まれてるから、温まらないだろうと言う風に言われているということで。外されてるということですね。

《加》 その高温に脳細胞が弱いとかそういうのではなくて、別に効果が少ないからやってもやらない方が良いということですか?

《照》 それについてちゃんと実験された事を、聞いたことはないのですが。実は、ヨーロッパの機械などでは、骨に囲まれていても高周波を使った機械で、高周波の周波数は違いますけれども、あえて脳にかけているそういった機械もあるようです。それで、別に脳は多分、血流が非常に豊かですから。それに応じてきちんと反応してくるのかなと思いますが、先生のご専門ですから。どうでしょうかね。多分、この機械とは別に、色々なものとしてはなっていないけれども、脳の中に金属の電極を埋め込んで、それを加温するという風な。そういった研究も血をコントロールするのに、やられたりしていますから。多少、温まって特別な問題が起こるという事ではないんだと思います。ただ骨に囲まれてるので、原理的に、なかなか難しいんじゃないかと考えられている事だと思うのですが。それについては、もう一度よく調べてみないと、僕もわかりません。

《加》 脳と言っても、やっぱり脳腫瘍、なかなかまだ手が出ない所が多いので、もしそれが効果があるのだったらやってみたいですよね。

《照》 そういう意味で、グリオブラストーマとか、脳の悪性の腫瘍に対してのデータというのは、ちょっと存じ上げません。

《加》 ありがとうございます。

《照》 後は、保険の適用になっていますから。癌のある患者さんでしたら、保険の適用として使用することが可能だということですね。色々な他の、岩盤浴とか温泉とか遠赤外線とか色々な温熱療法がありますけれども。そういうのとの違いの大きな点としては、そういった色々な温熱療法は、体の表面は温まるんですけれども、実際に癌がある部分は、なかなかそこまでは熱が到達しないで温まらないと。一方これらの高周波で、電子レンジと同じような効果で温まるので、電極の大きさを調節する事で、中の方が温まる状態にすることができると。全身的には本能が0.5°℃から0.8°℃くらい、体温がちょっと上がるくらいだったりしますが。癌の局所で温度を上げることができると言うのは、この高周波を使った局所温熱療法のヘッド。利点が特徴かなという風に思います。

 これは機械を使っている、冨田のホームページから頂いてきたものですけれども。二つの電極が体を挟み込んで、その間で、電極が変わると。それによって、電子レンジと同じように十分な熱が発生して温度が上がるんですよと言う様なことが、説明としては言われていました。それによって、深部が温まるということだそうです。それから、温めても正常の組織はそれじゃね、温度が上がっていかないのかという事で、正常組織については、血液の自律神経がきちんと働いたりしますし。温度が上がれば、それに応じて血流が増えることで、せいぜい40℃くらいまでしか温度が上がらないだろうと言う風に言われています。

 一方で癌の組織は、自分自身が大きくなる時に、血管などを色々作ってですね、しかも、迷路で行き当たりでない守られていない血管系で、自律神経がなかったりしますから。そういったところで、温度が上がっていった時に、温度の上がりに対応しただけの血流の増加が得ることが出来なくて、その為に熱がこもっていって。温度が段々高く、周りより高くなっていくという風に考えられているということだそうです。

《加》 自分勝手にやっている、なんかつけが。

《照》 まさにそういう事ですよね。まぁ、つけがきますよと。ちょっと環境が悪くなると、まずくなるという事かと思います。それで、局所温熱療法ですね。この時に、どういった効果が実際に得られてくるんだろうかという事で、癌の中心部分は温度が42.5℃くらい、血流もないしとかいうことで上がってくると、42.5℃以上で直接的な効果として、癌細胞がより死にやすくなってくると。それから、周りも含めて、この後ご説明する、制御性 T リンパ球という、免疫を抑えてしまうような、リンパ球が沢山癌の中に入り込んでいたりしますが、そういったものの数とかが減ってくると。

 それから、温めた時には、必ず癌の周辺部。癌の正常組織との境界部は、周りから血流が来てますから、それも含めて正常の周りの部分というのは、42.5℃まではいかないわけですけれども。それでもある程度は、39℃から42℃ぐらいまでも、温度に加温された正常な部分が局所として周りにあるわけですが。そう言った所で起こっている事として考えられている事は、免疫力の活性化という様な事は考えられていて。一つは、さっき言ったお巡りさんである、NK細胞の活性化とかですね。それから、後は、樹状細胞もより良い形で情報を得て、情報伝達をする様なことが出来るようになってくるという風に言われていますし、そういった組織の中に、血管からリンパ球が入り込みやすくなったりするような変化も、血管ででてきたりという風な事が良く言われています。

 それから、血流が増えること自体で、抗がん剤とかを使っていれば抗がん剤が入りやすくなったりですね。それから、放射線をやっている時には、血流が多くなって酸素もそれだけ来るようになるので。酸素濃度が高くなって、今までがうんと低くなってしまってたのがですね。それで、放射線、感受性が高くなる。癌のですね。そういったことが期待できたりすると。それから、全身的にこういった局所で温まった血液が回っていくと。で、全身的にさっき言った、一度までは上がらない、ほんのちょっとだけども、身体全体のやっぱり代謝が上がってですね。良い反応が身体全体としても起こりやすくなるという様な事が、局所と全身に渡って起こってくるという風に考えられています。

 実際に、ボランティアの人を使って、温熱をさっきの機械で肝臓中心に温めた時に、血液中で起こる変化を、昔に見たことがありますけれども。そうすると、加温をした後、免疫力がNK細胞活性が上がってきますよという事が観察されましたし、ただ個人差があるので、ばらつきはありますけれども。

 それから、後はこれは試験管の中でテストですが、癌細胞を温めてやると、その温めることで癌の表面に出てくるNK細胞を活性化するようなですね分子。これの発現が高くなりますね。その発現が高くなった癌細胞に、NK細胞を混ぜてあげると、NK細胞によって殺される癌細胞の数というのはやっぱり増えてくるということで。癌細胞は一生懸命ね、ベールで顔を隠しているわけですけれど。温めると、暑くなってきたというので、このベールを外して犯人の悪い顔が出てきてしまって、お巡りさんに捕まってやられちゃうと言う様な事が起こっているんだろうという風に考えられます。そういうことで温める事で、より免疫細胞に見つけられやすく、それで障害されやすく癌細胞が変化する。そういう事が考えられます。

 それから、樹状細胞というのは先程言ったように、癌の目印をキャッチして、それを殺し屋の T リンパ球に教えてくれる。そういう特捜部の司令官でしたけれども。癌細胞は温められると、その癌細胞の中で、ヒートショックプロテイン、熱ストレスタンパクというのを作り出して、そして、癌細胞と一緒になったりして。そういった癌細胞が死んだ後ですね、癌抗原をこのヒートショックプロテインが良い形でホールドして、そして、樹状細胞に良い形で食べ込まれるような形になるみたいです。そうすると、抗原提示能がですね非常に高くなって、癌細胞の情報をですね。樹状細胞がTリンパ球に良い形で教育する様になってくれるという事で、樹状細胞の働きも活性化してくるという事があるそうです。

 ヒートショックプロテインは、樹状細胞を活性化してくれますけれども、その他の色んな免疫細胞での活性化の機構に、ヒートショックプロテインが深く関わっているという事が分かっていて、沢山の専門の先生がこんなのは温熱の学会でもですね。シンポジウムでヒートショックプロテインについての、お話がされるようです。

《加》 なるほど。ありがとうございます。

《照》 リンパ球の癌の組織や、それから、リンパ節の中に入っていきやすくなるようです。

相武台脳神経外科
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