《 加 》 今回は、横浜新都市病院の芦田先生をお迎えして、お送り致します。芦田先生は、循環器内科の先生ですが、当院の一番の目的としましては、脳卒中予防という事を掲げているのですが、脳卒中予防って大雑把に言うと、脳に血管を守る、詰まったり出血させたりしないという事になってくるのですが。血管というのは体中にあって、脳だけではなくて他の臓器の血管も傷んでる可能性が強いので、特に連携を持たせてさせて頂いています。で、その辺の関係性の事に対して、今日は皆さんにお伝えさせて頂ければと思います。今日は、よろしくお願い致します。
《 芦 》 よろしくお願いします。実際にじゃあ、脳の血管に動脈硬化がある方が、先生がさっき言った通り、ちょこっとここに違和感がある方は、心臓もチェックした方が良いと言うような感じを持っていますという様な話でしたが、どれぐらい合併していますかね?どう思いますか?
《 加 》 手応え的には、動脈硬化の度合いにもよるんですけれども。
《 芦 》 ざっくばらんに言ってしまうと。
《 加 》 その症状が無くてあるなぁと思ったら、半分くらいはあるよなという感じはしますけれど。
《 芦 》 そうですよね。おっしゃる通りで、様々な論文によるんですけれど、報告によっては、4割りから5割ぐらいあるという風に言われていますね。で、これは我々の当院の方で出たデータですけれども、私が赴任してすぐの時に、そういうチェックをしました。後で説明しますけれども、肝動脈CTという心臓の方をチェックするそういう道具と、首の方は、動脈硬化をチェックするエコーですね、超音波検査。先生も良くやられていますよね。二つを組み合わせて、どれだけ合併しているのかというのを見てみますと、やはり大体40パーセントから50パーセントくらい。首の方に動脈硬化が合った方は、心臓の方にもあるという事がわかりました。
これは、論文でも同じなんですけれど。色んなものが世界から出ているんですけれども。大体、首の動脈硬化がある方の40パーセントが心臓の方と合併していると。しかも、この怖いのが、この40パーセントのうちの約半分くらいが、心臓の動脈硬化とすれば重症ですよ。ちょっと放っておくと危ないですよ、という様な事を合併していると。という事が、従来から報告されているんですね。で、しかもそのうちの4分の1。今言った通り40パーセントが首の血管に動脈硬化がある方は、首の血管にもできていて、そのうちの半分が重症だったという話。で、全体のその心臓が合併した患者さんのうちの4分の1は、なんと無症状なんですね。症状がない。ということは、ここまでの論文をまとめると、首の動脈硬化が合った方は、半分以下ぐらいの確率で、心臓の方の動脈硬化を合併させる事が高くて。しかも、その中の半分は、結構重症ですよ。で、かつ、症状をあまり感じていないという事が高くなりますから、やはちこれはきちんとチェックをしなければいけないんじゃなかろうかと言うことが、論文的にも紐解けると思います。
で、一方、最近出た論文でもですね、今度は首の動脈硬化の軽い人達です。重症では無いんですね、首の動脈硬化の軽い人達が、どんだけ心臓を合併しているかという事を調べた論文があったんですが。こちらもちょっと難しい、こまかいんですけれども。軽い動脈硬化。首の方の動脈硬化が軽くても、結構な割合で心臓の方には重症な狭心症を合併していたという事も、報告されていますから。
やはり、首の動脈硬化の軽い、重いは関係なくてですね、ある無しの段階で、ちょっとでもあるのであれば、念の為心臓の方もチェックしといた方が良いんじゃなかろうかなと。その方が、早期発見、早期予防、早期介入という事が出来るのではなかろうかなと思います。
従来的にはと言いますか、いわゆるそういった事もありますけれども、心電図にまずは入ります。まず心電図を撮ります。ただ、心電図というのは、皆さんがおっしゃる通り、安静時といって、その場でじっとした時の心電図検査なんですね。
で、狭心症というのはどういう病気かと言いますと、基本的には、血管の中に動脈硬化が出来てしまって、血が十分に流れてきません。心臓の筋肉に対して十分な血が流れてませんよという状態が、狭心症です。なんですけれど、じっとした時時というのが、心臓は少ない血であっても十分動くんですね。ですから、その安静時と言いますが、安静時に撮った心電図というのは、狭心症の変化では、あんまりめったに起こさないですね。そういう意味では、じっとした心電図というのは、結構健康診断とかで撮られますけれども。ああいうところでの狭心症を発見する事は極めて難しいです。
一方、話は脱線しますが、心筋梗塞というのは、血管が詰まった状態になりますから。もう筋肉に血が流れてこないわけなんですね。そうしますと、筋肉はダメージを受けてきますから、筋肉がその部分が壊死壊した、簡単に言うとその筋肉が死んでしまったと言った初見が心電図に出てきます。そうすると、いつ撮ったとしても心電図で、心筋梗塞になってすぐだとわからない時もありますが、時間が経ってくると、心電図に変化が出てきます。
それでですね、平たく例をであげていきますと。心筋梗塞というのは、車で言うと交通事故なんですね。止まった車を見ればわかりますね、交通事故だと。これは車がへこんでいるわ。これは車が交通事故を起こしたなと。それが、安静時に心筋梗塞を起こした心筋梗塞なんですね。
ですが、狭心症というのは、一種のスピード違反でありまして。スピード違反をしたとここを捉えなければ、止まっている車を見ても分からないんです。この人、スピード違反するんですよと言われても、いやわからないよ、心電図を撮ってみないとわからなよとなるわけなので、見張っておきましょう。あるいは、実際に車を運転させましょうという様な検査をしてくるんですね。それが、負荷心電図、先程おっしゃったやつですね。ベルトコンベアの上とかですね、階段を登ったり歩いたり。心電図を着けたままにして、生活をやってもらう検査なんです。その時に、どのような心電図変化をするかというのを捉えて、狭心症があるかどうかをチェックしましょうという事なんですね。
これはこれで大切な検査です。いわば、今、狭心症があるかどうかと事を見ていると言う意味では、心臓の筋肉の度合いを見ているだけなんですね。で、もう一つ検査があって、24時間つけっぱなしする心電図があります。ホルター心電図で、これは今度は車で言うと、スピード違反はずっと見張っておきましょう。ずっと監視しましょうと同じですね。24時間生活してもらって、身につけたままにして過ごしてもらうとですね。どういう変化がそれから取られますよという検索になります。
いずれもですね、心電図を通して心臓の筋肉の吐血という狭心症の度合いを見ましょうという検査なんですけれども。二つ問題点があります。一つは、心電図は所詮、手が届かない身体検査なので、100%の事がわからない時がありますね。大体、感度が8割ぐらいです。8割5分ぐらいで正常ですね。で、そういう意味では、分からないところもあります。で、もう一つはそれで撮られたとしても、違っている場合もあります。やはり外から見ているものだというのが、難しい所でもあります。で、もう一つは、それは結局、心臓の筋肉がダメージを受けますかどうかという事を見ているだけであって、動脈硬化の程度を見ているわけではないんですよね。
《 加 》 心臓を栄養している血管が、流れにくいかどうかを見ているものではないんですね。
《 芦 》 そうです、そうです。血管の状態そのものを見ているわけではない、という事になってくるわけなんですね。ですから、それはそれで重要な検査ではありますけれども、それで問題がないからほっといて良いかどうかという事にはならないと。そんなことも、首の動脈硬化もそうですが、首の方をチェックしているのは超音波検査でもって、動脈の血管の状態を見ている訳ですよね。脳に入っている血流が、多いか少ないかを見ている訳では無くて、首の状態、動脈の状態を見ているだけなんで。それと同じことをしましょうと言った場合には、心臓の場合は、今の現段階おすすめできるのは、CTだと思います。冠動脈CTですね。
これね、非常に簡単です。点滴をします。そこから、造影剤という薬が入ってくるんです。結局、CTというのはレントゲンですから。ただ単に撮っただけだとですね、血管の状態は分からない、骨しかわからないですよね。ですから、レントゲンの中で、コントラストをつけるために造影剤という点滴をするのですが。その中で、点滴をした中で、CT室に入っていって、ドーム型の所に入っていってですね。で、だーっと輪切りの写真を撮っていきます。輪切りの写真ですね。まぁ、15秒から30秒ぐらいですね、撮っている時間帯は。で、その間、造影剤が入ってくるので、カァっと熱い感じがしますけれども、すぐに治ってしまいます。息を我慢しなさいと言われます。息を止めるのも10秒ぐらいですから、本当に勘弁な検査なんですけれども。
その結果、こういう実際の心臓の上に走ってる血管、冠動脈の血管の状態がわかるわけなんですね。そうすると、色々な治療法がありますけれども。例え、手術とかカテーテル治療とかが必要ないとしても、今どういう動脈硬化がありますよとか、まったく動脈硬化が無いのか。少しでもあるのかといった事が、分かってくるわけなんですね。
《 加 》 凄くはっきりと分かりますね。
《 芦 》 はっきり分かりますね。ほとんどの場合、はっきり分かっていますので。
《 加 》 僕がこの研修医だった10年くらい前だと、この検査ってあまり馴染みが無かったんですけれども。これは、最近でてきた検査ですよね?
《 芦 》 そうですね。日本に入ってきたのはここ4、5年から5、6年位だと思うんですけれども。入ってきても、これは結局、心臓って脈を打ってますね。拍動してますから、動きのあるものなので、なかなかその昔だとですね、綺麗に作れなかったんです。今はですね 、CTの所が、その複数64列とかですね、256列とかいっぱい、複数の完治するものをいっぱい付けておいて、ぐるぐると回すと一気に撮影ができるような状況にして。そういった事を使うことによって、こういう様な細い画像が出来るようになってきたんですね。
《 加 》 昔は、その他の血管からカテーテル、管みたいな物を入れてたらないと、こういう画像は出なかった。大事な検査をしないと出なかったはずなんですけれども、凄く簡単になってきてるとは思うんです。こういう検査に関してはですけれど。思うんですが、今、循環器内科の先生の中で、例えば、基本的には狭心症状だったり、頸動脈の動脈硬化があったら、こういう検査をするというのは、ある程度、スタンダードになってきそうですね。
《 芦 》 そうですね。多くの病院では、こういったCTをカテーテルをするのではなくて、まずはCTからしましょうという病院が増えてると思うんですね。まぁ、ただそれは結構病院によって違ってきているので、何とも言えないのですが。一つは、CTもこれは撮るのは簡単なんですよ。ただ、この画像を作っていくまでが、結構時間がかかる。技師さんとかですね。それが、結構大変な事をしないといけないので。どうしても1日に撮らなければいけない枠数というか、撮れる件数が決まってしまいますよね。
《 加 》 それではある意味、ABIで異常値が出るとか、足の血圧を測るABIで異常値が出るとか、頸動脈エコーで動脈硬化がちょっと出て症状が何もない方が、こういう検査ができると言うのは、日本の中で言うと世界の中でも、凄くメリットというか。かなりの高いレベルの医療という事になりますよね。
《 芦 》 そうですね。なかなかだと思いますね。結局、見落としが減りますしね。先ほど言ったような検査だった場合は、大丈夫ですよ。本当ですか?といった所はまだちょっとありますよね。でも、これだと、動脈硬化は今はこの程度だから、あなたはこういった予防をしなければダメですよ。コレステロールを下げましょうとかタバコをやめましょうとか。色々なそういった指導にも出来ますし、今後は、何年か一遍はこういった検査を受けた方が良いですよとか。色々な情報をピックアップできるという意味ではですね、非常に持っている情報量は、非常に大きい検査だと思うんですよね。
そういう意味では、この検査は私自身はお勧めしますし、特に、足をびっこひいている方、先程言った閉塞性動脈硬化症で、足に動脈硬化がある方が、運動負荷心電図はできませんから。そういった事を考えても、こちらの方が簡便では無かろうかなと思います。
戻すはですね、この大きなメリットは、心筋梗塞という大きな病気はですね。動脈硬化が進んだ所からなるんじゃないんですね。動脈硬化は軽い所、一見何ともないですよというところの動脈硬化からなることが多いんです。なぜかと言いますと、最初の動脈硬化というのが、不安定なものが多いんですよ。同じ動脈硬化といってもですね。で、その不安定な所というのが、良く我々は怪我をしますよね?血管をピッと怪我した時、そこは血が出ちゃいますから。止めるために血小板って寄ってきて。で、こう止血作用って働くんですけれども。ピッとこうキズが入りやすい、そういう状況が最初の動脈硬化になります。不安定な動脈硬化なんです。
不安定な動脈硬化って、血管の打つ側にピッと傷が入ってしまって。簡単にそこの所が、血管の内側に傷が入るものですから、そこに血小板が同じ様に寄ってきて。そこに血の塊である血栓が出来てしまうんですね。そして、血が詰まってしまうという事になるんですけれども、その軽い動脈硬化の武器というのは、狭心症がでないんです。とりあえず、動脈硬化は軽いからまだ。その意味では、軽いところで運動負荷試験をやって問題がなかったから、心筋梗塞にならないという保証は無いですよね。でも、CTが撮れば、血管の状態が分かります。これは、血管の状態が分かりますから、そこの動脈硬化が少しでもあった場合に、それがどういうものなのか。これは危ない動脈硬化なのか。これ全く放っておいても良いですよというものなのか、という事がまず分かります。危なければ危ないなりに、そういった事を予防する薬という事を使えるという風になりますから。そういった意味でも、このメリットは非常に大きなものになっている。心筋梗塞をある程度、予防する事に繋がるであろうなという風な事になっています。
検査時間は15分ぐらいですね。病院に来てもらって。当院においては、ほとんどの場合、なるべくもうその日に受診してもらった時に、なるべくは撮れるように。今、スタッフ含めてですね、全力でやっているという風になります。大概の病院だとですね、1ヶ月待ちとか。2週間から1月待ちというのが普通ですね。当院では、やっぱりね皆さん遠くから来てもらっているので、なるべくは患者さんに何度も何度も来てもらわなくて良いように。患者さん目線で考えて、その日のうちに、あるいは、近日中には撮れるようにという事を、心がけております。
もう一つ、このCTに関して言えばですね、当院においては、お腹のところ、ちょうどへその所にもですね。もう一個CT画像を作るんです。何を見てるかと言うと、内臓脂肪というのを見ているんですね。内臓脂肪こそ赤くなって見えてますけれども。内臓脂肪面積というものを、計算というか計測を出すことによって、普通は100以下が正常なんですけれども。100以上あると多いですよ。150平方センチ以上あると、多すぎるという危険性がありますね。
内臓脂肪面積が多ければ多い程と言いますか、内臓脂肪が多いとですね、動脈硬化が起こしやすくなってくる。一つの、良くないものなんですね。ですから、これはサービスでやっていますうちは。これは別に、CTをやっている所が全部はやっていなくて。当院では、サービスで撮ってですね。心臓の血管は問題ありませんでした。ですが、内臓脂肪面積が多かったので、今後は、運動した方が良いですよとかね、そんなことを患者さんにフィードバックできるような事をさせてもらっている、という事になります。