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水上治先生インタビュー第2回「日本で補完医療が浸透しない理由」

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《 加 》  こんにちは。相武台脳神経科の加藤貴弘です。今回は、ちゃんねる S 番外編。市民公開講座に、水上治先生をお招きしてお話を伺います。水上先生は、弘前大学を卒業された後、英語での地域医療やカリフォルニアで公衆衛生学を学ばれた後、今は市ヶ谷の方で補完医療を中心に、医療活動をされております。私が考えるに日本では、補完医療というのは、だいぶ遅れている部分があると思うのですが、そのパイオニア的存在である水上先生に今日はお話しを伺おうと思います。もし、参考にして頂けましたら幸いです。宜しくお願いします。

《 水 》  特に化学療法を受けて、体がガタガタになってしまっているような方は非常に多いのだけれども、じゃあ、どうしてアメリカの癌専門病院で針をやるのかというと、上手く針を打つことで、元気になる可能性があるからやっているわけですよ。針ももちろん補完医療です。ですから、そういう意味でね、私は日本程、遅れている国は無いのではないだろうかと。非常に、嘆かわしく思っています。

《 加 》  その大きな原因として、今まで刷り込まれた事が大きいと、私自身も思っているのですけれども。うちの祖父がいて、祖父が戦争に行った時に、子供の時に「じぃちゃん、天皇陛下って神様だと思っていたの?」と、おじぃちゃんに聞いたら、「だって、教えてもらっていたのだもの。」と、言っていた。教育ってやはり刷り込まれてそう思ってしまうと思うのですが、何でその西洋医学以外の体に良いと思う事が、実際にはあると思うのですが。そういうのが日本に受け継がれられないのかというのは、ちょっと漠然と感じているのが、一つはやっぱり日本は、中途半端に裕福というか。お金があるのですね、医療費にしても。まだ、破綻していないというか、ある程度裕福だという事と。

 もう一つが、ほとんどの人が無宗教の方が多いというか。自分の体の関係性、人生との関係性とか健康の考え方というのが、自信が無い方が多くて、やはり権威があるものにすがってしまう。お医者さんの言う通り。僕らもずっとそう刷り込まれてきたのですけれども、やっぱり社会的にも、それを受け入れられないというのが、社会にもあるのかなという感じがあるのですよね。だから、医者だけの問題ではないかんじがして、これからやっぱり、健康を考えていくうえで、生命力一辺倒というのはどうにも片手落ちな所は否めなくて、どういう風に世の中の人に伝えていけば良いのかなというのを今、手探りで患者さんと一対一でお話しさせて頂きながらやっているのですけれども。お金の問題と、その裕福だという事と体との関係性というものを、医者にすがっているという部分が一つあると思うのですよね。

《 水 》  まったく同感ですよね。やはり、色々な国を回っても日本は非常にリッチですから。逆に言うと、お金があれば幸せも買えるし、何か健康もなんとかなる。多少、不本意ながら不摂生を続けていても、大病院にかかれば、何とか直してもらえるだろうという甘えの構造に陥っているように思えますしね。それと、先生がおっしゃるように、西洋医学というやつは非常に優秀なのだけれども、結局、いわばデジタル化できないものに関しては、ノーアンサーなのですよね。すなわち、何を申し上げたいかというと、心というのがあるじゃないですか。でも、心がどこにあるのかってまだわかっていないわけですよ。でも、絶対に心はありますよね。で、日本が今までの伝統的な文化を考えると、やはり心を凄く大事にして生きてきたと思うのですが。やはり、化学、化学という事で、化学で何でもわかるのだと。解決できるのだという、科学万能主義的なものが、あまりにも萬栄しているのではないかと思うのですよ。

だけど、例えば、西洋医学を考えたって、電子カルテなりカルテなりね。で、僕らは色々と記載したりネットで見たり、血液のデータなど全部がデジタルですから、そういうもので診断したり治療に向かうわけだけれども。だけど、ハート、心はね、全然捉えられないわけです。でも、あるのですよ。凄く大事なのですよね。だから、私はね、やっぱり目に見えないものの方が大事とまでは言わないけれども、やはりそういう物もね、医療においても。大切にされるべきだと思うのですよ。

やはり、残念ですけれども、医学教育において、患者さんの心という事に関して、どうでしょうか。医学生も研修医もね、十分にね。訓練されているのかというと、多少疑問を感じますしね。だから、見えないものも大事にする。そういう意味ではね、日本人とか東洋人というのは、そういう心というものを大事に長く生きてきたのではないかと思うのです。そういう意味でも、やはりこれからの医療というのが、患者さん一人ひとりの心も含めて。医者も心があるし、心と心のいわば、交流というか対話が、医療ではあるわけだから。そういう意味では、もっともっと西洋医学の中でもですね、心というものをね、大事にしてほしいなという気がしてならないですね。

人間の捉え方というのは、西洋医学的な捉え方というのはありますよね。それは、さっきも申し上げたようにね。色々なデジタル的なデータの組み合わせで正しい答えに迫って、そして、正しい治療を自動的に。診断出来てしまえば、答えも自動的に出てしまうみたいなことになります。しかし、人間という存在は、立体的だし。結局、縦横高さプラス時だから、四次元の存在じゃないですか。

《 加 》  時間の繋がりもありますしね。

《 水 》  ですよね。ですから、先生とお話しを始めてから何十分か経っているから、もう、細胞もだいぶ入れ替わっているし、まったく同じものではないわけですよ。誘導的ですよね。だから、人間理解というのも、私はいつも思うのだけれども、西洋医学の判断というのは、非常に何というのですかね。例えば、私という人間をね、こう胴体の所から真二つにして、「あっ、あなたはこんな形ですよ。」と、言うのもある分正しいのだけれども。でも、それは瞬間、瞬間で私も変わっているし。それから、切り口も、無数の切り口がありますよね。斜めの切り口とかね。真二つとかね。足だけとか。だから、その人の切り口というのも、むしろ無数にあるのだという事は、解釈も無数にあって良いのですよ。
 それなのに、西洋医学というのはね、胴体だけちょん切って、あなたは末期がんだから、あと三ヵ月で死ぬよ?みたいな。医者は神様ではないのに、そういう風にね、断言的にご託宣出来るわけでも無いのに、そういう事を言っている瞬間において医者が、やはり神の座に上りすぎているのではないかなと思って。しかしながら、患者さんは凄く弱い立場だから、それにすっかり洗脳されてしまって、「あぁ、私はもう三ヵ月後に必ず死ぬのだな。」って、もう思い込んでしまうわけですよ。これは、越権行為だと思うし。ですから、私の考え方というのは、兎に角人間というのは、非常に多面的な存在だから、一つの切り口だけで判断をしては損ですよという事を申し上げたいのですね。

《 加 》  西洋医学が必要な場合というのは、もちろんあるのだと思いますし。その手段を使う時に、どう体と向き合っていくかという事を、これからの、僕らとか医者は指し示すことが出来たらなというのがあって。そこを言っている医者というのは、日本の中であまりいないような気がするのですけれど。

《 水 》  私がいつも申し上げているのは、兎に角、西洋医学はもう素晴らしいものなのです。本当にね、もう人生の英知を傾けてね。優秀な方々がね、何百年も研究し、一つのシステムを作り上げてきたのだから、素晴らしい物なのですよ。これはもう、疑念の余地がないのです。だけど、隙間はあるだろうと。その隙間をね、ちょっと補完する需要もあるじゃないかなって、ささやかに言っているので。もちろん、西洋医学に並び称されるレベルの補完医療というのはない。あくまで、隙間という風なことで良いと思うのですよね。だから、そういう謙虚さを僕は失いたくはないし、僕自身も、やはり西洋医学のライセンスを持っている医者にすぎませんからね。ただ、弱体はちょっと、時々補強させて頂いた方が良いと思うし。

結局、僕的にはですね、色々なことを要するに、限界にぶつかって苦しんでいる患者さんを目の前にする時にね。色々な情報を差し上げて、「○○さん、西洋医学だけだと、こんな感じですよね。」と。で、補完医療でもあるけれど、そういう場合はこういう風に限界があるけれども、少し元気になるかもしれないとか、そういった話をして。で、患者さんが自由に選んでい頂ければ良いと思うのですよ。選択肢が広がりますよね。で、そこに一部の希望を持つ人がいるかもしれないし、それを否定してはいけないと思うのですね。ですから、最終的に、その患者さんが、やっぱり西洋医学だけでこれからも行きますとおっしゃれば、それも素晴らしいと思うのです。ただ、それ以外の情報も加わったうえでの選択だから、西洋医学だけでそれしか選べなかった状況とは、まったく僕は違うと思うのですよ、精神的にも。
だから、私自身の考え方は、西洋医学は素晴らしい。でも、ちょっと弱点もあるかなと。場合によっては。補完医療も良い所はあるけれども、科学的根拠が弱いとか。あまりパワーが乏しいとかですね。弱点は沢山あるわけですね。インチキも多いですしね。ですから、あくまで、理想的には良いとこ取りで行きたいのですけれどもね。西洋医療を、ほとんど皆さんメインに選んでらっしゃる。私自身が、沢山の癌の患者さんと会ってきたのですけれども、本当に経過の良い人は、ほぼ100パーセント、きちんと手術を受けたり放射線を受けたり、いったら抗がん剤を受けたりしてらっしゃるのですよ。そのうえでね、補完医療をやる事で、より元気になって闘争心満々で、5年間何とか戦い抜いたとか。そういう方々なのですね。ですから、何とか良い所取りでね。いっていただくと、患者さんも満足度が高いじゃないかなと思うのですね。

《 加 》  私もやはり水上先生みたいな先生がいらっしゃったら、凄く安心しますね。手段がいっぱい提示されていて、こんなやり方もあるのだと思えると凄く、絶望している時にそうなったら凄く嬉しいですね。

《 水 》  どんな医療もね、長所だけってことは無いわけですよ。西洋医学の弱点についてはね、多くの患者さんはきっと情報不足だと思います。それを強調する必要はないと思うのですけれども、逆に言うと、補完医療も弱点が沢山あるわけです。西洋医学の長所と弱点を、頭の中である程度整理して、今提示されている、今目の前にある補完医療という具体的なものに関しても、プラスとマイナスをある程度しっかりと理解した上で選ばれたら、まぁ悔いは少ないでしょうね。

《 加 》  そういう病気を治す為に、こういう手段を提示していくというのは、凄くあるのですが。そこで、例えば、水上先生のえりもでのおばぁちゃんみたいに、えりものおばぁちゃんが病気になってしまった時に、札幌に行ったら助かるけれど、私はここで死ぬのだから良いよと言って、最後を迎えたエピソードが前に映像でありましたけれども。例えば、その生き方に、そういう方もいますよ、みたいに話をするというのは、越権行為ですかね。

《 水 》  いや、全然そうだとは思いません。むしろ、大事ではないでしょうか。結局、今の医療というのが、どうしても西洋医学の弱点として、肉体は切り刻むのだけれども。デジタル情報は十分にゲットするのだけれども、やはり、一人ひとりの患者さんの心というものが、よく見えないとか。あるいは、多くのドクターが心に関心が無いとか。という、残念な現状があるかとは思うのですけれども。現実には、人々はやはり、例えば皆さんの支えの元で生きている。一人で生きている人はいませんから。そういう事も、医療でもっともっと大切にしていかないと、寂しいですよね。

《 加 》  水上先生の所には、私の理解では癌の患者さんが多いので、患者さんのニーズでいうと、生きたいというか。元気になりたいというニーズが一番だと思うのですが。脳外科クリニックだと、診療の中心がそこまではいかなくて、生活習慣病の話になってくる。で、生活習慣病の話になってきて、患者さんのニーズだと、タバコ吸いたいとか、甘いもの食べたいとかお酒飲みたいとかであってきて。ニーズに応えるのはもちろんですけれど、ニーズよりもその、もっと大切なものがありますよって事を伝えていかないと、いけない立場にあるのかなという感じはするのですけれども。だから、そこの意味で、体との向き合い方をどう提示できるのかという部分で、ちょっとやっていきたいなというのがあるのですが。
生活習慣病や片頭痛の中で、そういう症状を捉えていく時に、やはりその症状の原因になるものをちょっとみて、それを解消していくのですが。原因のなるものって通常見えないのですよね。片頭痛だったり、高血圧だったり、生活習慣病から不慮な症状というのは、みんな闘っているのは何かというと、痛みと闘っていたり、血圧が高いことと闘って薬をやると。それって闘い合う相手ではなくて、原因と闘いましょうと言うのですけれども。原因がなんで僕らは見えないのかというと、根本的に体との向き合い方が勘違いしているのではないかと思っていて。
一言患者さんに言うのですけれども、人間の身体ってほとんどが自動操縦されているってご存じですか?という風に言うと。え?て言うのですね。僕も昔はそうだったのですが、でも、何を言っているの、この人はと思われるのですけれども。でも、言われたら分かると思うのですけれども、髪の毛を伸ばすのも自動だし、目のピントを合わせるのも、ご飯を食べて消化したりとか心臓を動かしたり、体中ほとんど凄く色々な機能が働いて、動かしてくれているのですよと。で、心臓は今、動いていますけれども、心臓がへそ曲げて、あと5分生きられませんよと。で、今、生きているのではなくて、生かされているのだという認識がまずあると、色々なものが見えてくるというか、体との向き合い方が。
じゃあ、何が動かしてくれているのかというと、西洋医学的には自律神経というか、そこが大まかに動かしていると。でも、よく考えると、何十年と動いてくれていて、人間だけ魔法の世界で生きているわけではないので、動きが悪くならないわけないだろうと。で、そういう緊張が強くなっていったら、高血圧にもなるし片頭痛にもなる。それが一つの兆候ですから、じゃ、闘い合う相手は誰ですかと。長年かけて緊張が強くなっていった自律神経を緩めていく、という事をしましょうみたいな話をするのですけれども。まず、前提として、やっぱりその、生かされているということに気付くと、体との向き合い方がかなり変わってくるかなと思って。

《 水 》  私はそれがね、本来の医者の唯一の仕事ではないのかさえ思います。そして、非常に大事な事だと思います。で、先生がお気づきのように、もちろん、西洋医学は素晴らしいのだけれども。やはり、弱点としては、どうしても、対症療法に陥りやすいという事だと思うのですね。確かに、例えば痛ければ、鎮痛剤を使ってあげて、痛みを解消してあげないと、それこそ交感神経の緊張が続いてしまってもまずいし、そういうのは優れていると思うのですが、やはり患者さんってつい、そういった薬に頼りすぎてしまって。楽ですからね。そして、生活習慣の悪い部分を、補正しようとしにくい。やはり、人間って基本的には、怠惰な存在だと思いますから、楽もしたいしずるいというか。本質的にそういう部分はありますよね。薬を打ってしまうのも理解はするのですけれども、やはり、原因を放置すれば段々と歪みが大きくなってしまって。ある日突然、とんでもない事になるなんて、そういう患者さんもね、僕は沢山目撃してきましたから。先生のそういう考えも、本当に素晴らしいと思いますし。まぁ、残念ながら、そういう風に考えられるドクターがほとんどいないのではないかなと思って。本当に関心して、お聞きしていました。

《 加 》  水上先生の活動に凄く勉強させられていて、一つひとつ勉強をしていきたいなという風には、感じてはいるのですが。

《 水 》  私、ある時ね、この事実に気づいたのですよ。すなわち、交感神経が緊張し続けていくと、色々な病気になりますよね。どうも、交感神経の緊張が続くと、免疫力も落ちますよね。色々な病気が近づきますよね。で、人体というのは、結局、交感神経の緊張が続くと病気をするようにできているというか、設計されているわけですね。で、逆に副交感、いわゆるリラックス状態が続くと、病気からむしろ遠ざかるという風に、人間が出来ている事実にね。気付いた時にね、ハッと思ったのですね。
 要するに、造物主というものがいるのであれば、逆に設計もできたわけです。すなわち、いつも怒りまくっていると、もうイライラしていると。そういう交感神経を緊張させるように生きていると、逆に病気から解放されるようにも設計できたのに、神様がそう作っていないのです。逆なのですよね。これは凄く面白いなぁと、ふと気づいたのです。だから、やはり、なるべくリラックスをして、交友関係を穏やかに、むしろエンジョイするように生きた方が、例えば、癌の予防にもなるし、もし癌になってもコントロールしやすいでしょうし。色々な生活習慣病からもやはり離れられるかもしれないと。そういう風に出来ているのだから。
 だから、私はね、このメカニズムを素直に受け入れて、副交感だけでも良くないらしいのですけれどもね、やはりそういう風に設計されているという事実を、やはりもっともっと皆さんに知って頂き、受け入れて頂いてね。そしてそれを、うまく自分自身のライフスタイルの中で活かしていくことが出来れば、やっぱり病気の発生も速攻減るはずだろうなと思っているのですよね。

相武台脳神経外科
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