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映画プロデューサー 村岡克彦PART2

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《 加 》    認知症のこの、『ぺコロスの母に会いに行く』というのも、どんどんと色々な人のことを忘れて行って。自分の今までの財産というか。それが無くなっていく中での、親子の交流みたいな感じで。

《 村 》    そうですね。色々な物というのは、無くなっていくのですけれども。歳を取るにつれて、最後に残るのは何だというところで。そこで、愛というものがやはり。

《 加 》    愛ですか。

《 村 》    最後に残るのは、愛なのかなという。そして、愛のある記憶というのは、無くならないというのがあって。それは、『ぺコロスの母に会いに行く』というのは、監督の森崎さんがおっしゃっていたことで。愛の記憶というのは、絶対になくならないという。どんな、色々な記憶がなくなっても。それを、おっしゃっていて。僕らもそれをなんかね、作る途中でも。色々と、何か自分の中に噛み締めながら、できましたけれども。

《 加 》    愛の記憶というのは、例えばどんなことですか。

《 村 》    本能的なものですよね。もう小さい頃から、その子どもと親の間で培われてきた、愛の記憶というものが。ようは、名前とか。色々なこととか、忘れていくことはいっぱいある。でも、最後に残るのは、自分が一生かけて愛した記憶だけは、それが最後まで残っているというのがあって。

《 加 》    今、波を作っているのも。村岡さんが、Facebookで波を作っているのも、結構 Facebook 系が多いですよね。

《 村 》    やはり、既存のメディアというのが、信用されなくなってきているわけですよ。例えば、テレビで映画の番宣が。今度、上映する映画の番線を観て下さいねという、番組の番宣が流れたところで。みんながそれで、観ないんですよね。これは、どうせ宣伝だからと思っていて。それよりもやはり、SNS で流れてくる情報。あの映画は良いよ。あの映画は観た方が良いよという。そんな情報というもんで、皆さん動くようになってきていて。

 例えば、去年公開されました。『この世界の片隅に』という、映画があったのですけれども。アニメで、広島を舞台にした。のんちゃんが声優を務められたやつなんですけれども。あれとかは結局、のんちゃんの絡みもあって、メジャーのテレビも雑誌にも、CMでも。もうほとんどで宣伝ができた。そうしながらも SNS で、あの映画は良いから観た方が良いという、あの拡散だけで、興行収入25億円ぐらい。

《 加 》    おぉ、良いですね。

《 村 》    本当はなんだっけかな。今、僕も映画を作るにあたって、色々な既存のメディアを使うというのは、それでもメジャーの作り方としては、世論なんでしょうけれども。僕らみたいにインディペンデントの人間にとっては、使おうと思っても使えないですし。使ったところで、大して何かメリットもないんだったら、別にだったらもう。自分たちでどんどん発信していく方が良いなと思っていて。

《 加 》    今、テレビとかを観ても、白々しく見えてしまうところがありますね。全てのものがこう。全てではないにしても全ての情報が、結構何かお金儲けにこう、感じてしまって。

《 村 》    そうですね。センスさえあれば、今はそのメディアというのが、自分で持てる。もう YouTube であれ、何か色々な形で発信するメディアというのは持てるようになっていますから。変に逆に、あの中央のメディアの方が遠くなってしまうじゃないですか。何か事件があった時にでも、テレビの方がもう後追いになって。メディアの方が速いじゃないですか。あとは、SNS とか。そういったネットメディアの方が、圧倒的に速いですからね、情報は。

 多くの人が求めているものと、その中央のメディアが出すものに対して、少し色々とあの温度差というか。色々な違いというか、誤差がでていて。そういった物というのは、やはり僕らインディペンデントな人間ですから。コンプライアンスも、そんなに意識してないです。

 でも、東京のキー局とか、色々なところの中央メディアというのは、スポンサーがいて。コンプライアンスがあるみたいなことになっているからもう。色々な所にも、お伺いを立てて。忖度ではないですけれども。伺いを立てながら。だからもう今は、インディペンデントの映画というのは、やはり面白いですよね。

《 加 》    面白いですね。

《 村 》    テアトルさんですとか、色々なところでやっていますけれども、放送禁止用語なんて、ばんばんでるし。もう映倫さえオッケーならオッケーみたいなところですから、インディペンデントって。

《 加 》    そういう映画が、テアトルとかでやっているのですか。

《 村 》    やっていますね。これはテレビでは絶対に出来ないよねというのを、やっていますよね。そんな映画はやはり、いっぱいありますね。それが、面白いですし。僕らもどちらかというと、そちらの人間なので。

 そういった形の作品というのは、今は僕のところにもいくつかありますけれども。半分ぐらいはこれはちょっと、テレビではできないなというのがあるんですね。でも、だからといって、テレビでやってもらいたいわけではなくて。逆にもう、ネットだと多分、ネットで炎上してほしいぐらいの。

《 加 》    今は、村岡さんは、『ぺコロスの母に会いに行く』のと、『はなちゃんのみそ汁』との2作品ですけれども。その2つの作品の中で、ご自身で振り返ってみて、共通するものとかってあるのですか何か。作ろうと思ったきっかけというか何かで。

《 村 》    僕がそのいわゆる、悲しい映画を作りたくないのですね。悲しいとか、辛いとか。例えば、政治的な臭いがするだとか。そんな物というのを、あんまり作りたくないのですよ。僕は基本的に、コメディが作りたいので。だから、『ぺコロスの母に会いに行く』というのも、あれは喜劇コメディ。認知症、介護コメディというのですけれども。

 介護コメディであり、『はなちゃんのみそ汁』も、あまりその監督や脚本家にお願いしているのが、笑える映画にしてくれと。だから、辛い厳しいというシーンというのは、基本入っていないのですね。もうクスクスッと笑えるシーンを散りばめて。

 そして、終わった後でも、悲しくて泣くのではなくて。何か少し感動して泣くというところではないと、自分がやはり作っていると、自分がしんどいからですね。自分がしんどい映画は作りたくないですし。僕にもやはり、たくさん仕事が来るんですよ。戦争映画とか。

《 加 》    戦争映画ですか。

《 村 》    戦争映画とかも来ますね。あとは、特攻隊の物語ですとか。それこそ、福島のこの悲惨さを伝えてくださいみたいな、そんな映画の話がくるのですけれども。それは、僕が作らなくても良いのですよね。

 それは、それをやりたい人がいますし。そんな映画を、やりたいという監督がいて。やりたいプロデューサーがいれば、それをやれば良いですし。僕は基本的にはやはり、クスクスっと笑える映画を作りたい。

《 加 》    基本的には何かその、状況的には厳しいんですけれども。観ていて笑えるというか。

《 村 》    そうですね。

《 加 》    状況的に、認知症の方に関しても、末期の癌の方に関しても。状況的には厳しいですけれども。何かそこで生きている人たちの状況を観ると、クスクスと笑えて。そして最終的には、何か感動するみたいな。

《 村 》    そうでそうなんですよね。だからそれは、認知症に関して、『ぺコロスの母に会いに行く』の時にも言われたのですけれども。介護施設の方々に言わせると、実際もう毎日ね、笑うことの方が多いと。本当になんか、外から見ていれば、辛いことだろうな。悲しいことだろうな、しんどいことだろうなと、思うのでしょうけれども。そこで、働いてる施設の人にとっては、結構ね。毎日、笑うことがいっぱいあるのですよね。

 何かちょっとしたことがおかしくて。本当にだから、『ぺコロスの母に会いに行く』を観た時に、もうこの通りこの通りと、みんなで笑っている。本当になんかね、笑っているのですよ。施設の中では。そんななんかね、辛くて暗い現場ではなくて。みんな、そこにあるちょっとしたことを笑おうと思って、そういったことを、生きがいにしてらっしゃる。

 映画『ぺコロスの母に会いに行く』の中でもあったのですけれども、病室にもう死んだはずのおじいちゃんが訪ねてきたということ言うと、何言ってんの。そんな、もうおじいちゃんは死んだのだから、もうそんななんかね。嘘を言わないでよねと。そんなことをね、言ってはだめよと言うのではなくて。

 それは良かったね。元気そうだったの、じいちゃんはと。うん、そうだねと。じいちゃん元気そうでよかったねと。それで良いじゃんとなって。それを、否定するわけにはね。人を否定したところで何がね。

《 加 》    その人はそう感じているので。それは、他人が否定をしても、しきれないですよね。

《 村 》    そう。それで、その患者さんは、幸せに思っているのだったら。じゃあ、良かったねと言ってね。また遊びに来るといいね。うんって。もうそれで良いじゃんというのが、『ぺコロスの母に会いに行く』でもあり。

 だから、ボケることによって、本当だったら現実には、絶対に会うことが出来ない、亡くなったお父さん達が、ニコニコとお土産を持って、病室に遊びに来るのですよ。そして、毎日の病室の中が、みんな色々な人で賑やかに、何か過ごしていると。

 そして、ほかの看護師さんとかには見えないんですけれども、本人には見えていると。そして、楽しそうにしていると。それは、良いじゃないかと。楽しくて。今日は、楽しそうでしたねと言って。うんと答えていて。それで、良いじゃないかと。

 みんな、認知症介護は辛くて、厳しくて。切なくてということはもう、100も分かっている中で、見方をちょっとだけ。15°cぐらい、少し変えることによって、少しそれが楽になるのであれば。それはもう、現実の見方として良いじゃんと。

《 加 》    なんか、辛い状況であればある程、何かこだわっていなければいけないものを、離さなければいけない状況になってきているなと思いますよね。

《 村 》    そうそうそう。

《 加 》    どうでも良くなってきますよね。なんか、常識的なことがなにか。

《 村 》    そうなんですよね。いらんことにこだわっていて。

《 加 》    本当に、本音がでてくるのですかね。人間としての。そういった意味ではやはり、末期の癌の方とか。認知症の方というのは、そういう現場に近いのかもしれないですね。

《 村 》    そうなんですよね。おっしゃる通りで。

《 加 》    そういう厳しい状況で、本来の人間性がでるという状況の中で、将来的にはどんな感じの映画を、目論んでらっしゃるのですか。

《 村 》    そうですね。今ね、予定をしている映画が、3本ぐらいあるんですけれども。1本は、完全にシニア向け。もう60歳、70歳、80歳、90歳をターゲットとした。いわゆるもう、笑える。

 それこそ僕は、何が作りたいかといったら、もう一度、『フーテンの寅さん』みたいな。もうみんな家族が、みんなで一緒に見て笑って。そして、感動して泣いてという様なね。なにか、ものすごくシンプルな映画を作りたくて。そして今も、その枠組みができているのですけれども。大体のことが。それを、色々なところの全国の公民館で上映したいという。シネコンではなくて、もう公民館で。

《 加 》    公民館ですか。

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